
文
一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事 武神健之 たけがみけんじ
2007年東京大学医学部大学院卒業。産業医として20社以上の企業で年間1,000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行う。主な著書に『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』(産学社)、『職場のストレスが消えるコミュニケーションの教科書』(きすな出版)など。

実現されなかった期待の結果は……
あなたの責任? 相手の責任?
産業医面談では、ときに夫婦間の関係について、相談(愚痴?)を聞くこともあります。その中でよく聞く言葉が、「期待をしても、(相手が)期待通りに動いてくれない」という類のもの。
1万人以上との面談から感じるのは、上司と部下でも同様ですが、期待は❝する❞より、❝示す❞方がうまくいくということです。
本来、期待を❝する❞という行為は、自発的な行為です。ですから、その行為から生じた結果に対する責任は自分にあるはずなのに、いつの間にか期待に応えたか否かを相手の責任だと思ってしまうことが多いようです。
しかし、よく考えてみると、自分が期待をしているから相手がしなければならない、という道理はどこにもありません。ましてや、自分勝手に期待しておきながら、相手が期待通りに動いてくれないからとイライラし、相手を責めるのは筋違いです。
つまり、期待をするというのは自発的な行為ですが、最終的な判断は相手に委ねている状態だということです。
同様に、期待を❝示す❞ことも自分から進んで行う自発的な行為ですが、あくまで期待を示すだけで、期待に反してもやはりその責任は相手にはありません。
ただ、人は好きな相手から期待を示されたら、多くは自発的にその期待に応えたいとなるものです。あなたが期待を示したとき、相手があなたのことを大切に思っていれば期待に応えようとするでしょう。
つまり、示された期待に応えようとするかどうかは、自分と相手の関係性の中で成り立っているのです。
そこで大切なのは、自分が期待を示したとき、相手がその期待に応えたいと思う関係を築けているかどうかです。さらに、相手が期待に応えてくれるか否かは、自分と相手の関係性によるものであり、その関係を築けている、あるいは築けていないのは自分の責任だということです。
人間関係が上手な人は、このことを知っています。日頃から良好な関係を築き、期待をするだけでなく❝示す❞。すると相手はやらされ感がなく自ら期待に応えようとします。結果、お互いに気持ちのいいポジティブな関係がさらに強まっていくのです。

期待通りに相手がしてくれるとは限らないことは、分かっているようで意識していないと忘れてしまいがち。期待は「示す」だけであとは相手に任せる方が、期待以上の結果になることもありますよ。
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